『夜明けをまつどうぶつたち』は、
2019年、南米アマゾンの森林で発生した大規模火災の悲劇をもとに創作された絵本です。

基本情報
・タイトル :夜明けをまつどうぶつたち
・著者/編者:ファビオラ・アンチョレナ(著)、あみのまきこ(翻訳)
・発行日 :2024年5月25日
・ページ数 :34p
・出版社 :NHK出版
ページをめくると漆黒の闇。
闇、闇、闇 ──。
そこに浮かび上がる動物たちの姿。
何かを心配している様子。
怪訝そうな顔つき。
「もう ながいこと
夜が 明けるのを みていない。」
不安を覚えた動物たちは、
太陽を探して森の奥へと進んでいきます。
動物たちにはわかりません。
なぜ夜が明けないのか。
なぜ月がみえないのか。
なぜ雨つぶがおちてこないのか。
太陽が、どこへ行ってしまったのか ……
だから、
太陽をさがして動き出します。
夜がえんえんと続くなか、
歩き、羽ばたき、跳ね、泳ぎ、
うなり、なき、遠吠えしながら
太陽を求めて進みます。
けれどその先にあったのは、
ジリジリと森を焦がす偽りの太陽。
いや、まて。
これは まちのぞんでいた 夜明けの太陽ではない。
こちらをみつめる動物たちの黒い瞳が、
強烈に迫ってきます。

森林火災は世界のあちこちで激しさを増し、日本でも山火事が相次ぐようになりました。
その原因は、気候変動の影響によるものだけでなく、
直接人間によって引き起こされることも少なくないそうです。
世界の森林を、
わたしたちのすむ星を、
そこに生きる動植物を、
単なるビジネスの対象としてしか見ない人々が存在する ──
この絵本は、そうした人々への抗議の声です。
何もわからず追い詰められる動物たちの姿は、
わたしたちと重なります。
逃げて、逃げて、
むちゅうで逃げて……
漆黒の闇はいつしか、
終わりを告げて、
くれました。
おだやかな表情で、
森を、
緑を、
明るい空を、
満喫する動物たち。
この世界が続きますように。
もう二度と、太陽が姿を消しませんように。
漆黒の闇が、
本当に終わりますように ──
動物たちの祈りの声が、聴こえてくる一冊です。
人間は忘れる生き物。
どんな感動もどんな興奮も時が経てば記憶の底に沈みゆき、その片鱗さえも見失いがちです。
それは読書も同じこと。
読んだ直度の高揚が、数日後にはすっかり雲散霧消…… などということも。
ですが、読みながら機微に触れた内容を記録しておけば、大切なエッセンスだけは自分の中に残る── はず。
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