《絵本》『きみが 生きる いまの おはなし』ジュリー・モースタッド

読書

『きみが 生きる いまの おはなし』は、
確かにここにあるけれど、つかまえようとするとたちまち曖昧になる「時間」について、
具体的な例を通して感じさせてくれる作品です。

基本情報
・タイトル :きみが 生きる いまの おはなし
・作者/訳者:ジュリー・モースタッド (作)、横山 和江 (訳)
・発行日  :2023年9月30日
・ページ数 :56p
・出版社  :文研出版

朝は時計のアラームで目を覚まし、
カレンダーで日付を確認。

時間が来たら家を出て、
バスや電車は定刻通り。

チクタク チクタク

時計の針が指し示す。

⚪︎月⚪︎日

カレンダーに書いてある。

そこにあるのは12345678
いろんな数、数字、ナンバー。

数字は
時刻や月日を教えてくれはするけれど ……

 
 でも、時間って なんだろう?

種はめざめて花になり、
盛りを過ぎると枯れていく。
小さなアオムシはチョウになり、
日はまたのぼり、またしずむ。

写真にのこる一瞬は、
まるで昨日のことのよう。
だけどあのときの瞬間を、
再現することは叶わない。

ゆっくりだったり
はやかったり

騒がしかったり
静かだったり

今この瞬間も
ここにあり

目には見えないけれど
ずっと一緒にすごすもの。

だけど時間って ……

時間は時計の数字じゃないはず。
時間はカレンダーの数字じゃないはず。

じゃあなに?

それを考えさせてくれる絵本です。

黒い暗闇の中に一粒の種。
しおれて落ちるオレンジの花。
いっぱいに広がる細いクモの巣。
カラフルなチョウチョは羽を広げ、
サングラスに沈んでゆく美しい夕日。

思い出の写真、
海辺の砂のお城、
すばやいダンスと
なめらかに踊り──

洗練されたイラストを眺めていると
自分のなかの「時間」が徐々に
色鮮やかにふくらんでいくのを感じます。

原題は『 Time is a Flower 』。

自分にとっての時間を、
もう一度とらえなおしてみませんか?

人間は忘れる生き物。
 どんな感動もどんな興奮も時が経てば記憶の底に沈みゆき、その片鱗さえも見失いがちです。
 それは読書も同じこと。
 読んだ直度の高揚が、数日後にはすっかり雲散霧消 などということも。
 ですが、読みながら機微に触れた内容を記録しておけば、大切なエッセンスだけは自分の中に残る── はず。

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