『ペットが死について知っていること: 伴侶動物との別れをめぐる心の科学』は、『ゾウがすすり泣くとき』などの著書があり、動物の心の問題をライフワークとしてきた著者が、動物と人間がともに過ごす「最期のとき」の核心に迫った本です。

この地球上には、私たちが瞳をのぞき込んで反応を確かめようとしても、それがかなわない動物種(昆虫や爬虫類など)がいる。
一方で、その目に深い感情の発露を見ることができる動物もいる。
その筆頭が、なんといっても犬や猫たちです。
しかし、そうした犬や猫たちが、自分の死をどう認識しているのか、飼い主との別れに際してどんな感情を抱くのか、明確な答えは出ていません。
また、飼い主が動物との別れにどう向き合えばいいのか、喪失の悲しみをどう捉えたらいいのかも、未だ答えの出ない課題です。
そうした「最期のとき」にまつわる課題について、著者は自身の経験と多くの取材をもとに、動物と人間の多種多様な交流事例を示してくれます。
動物たちが抱きうる感情について。
愛するペットと人間との間に築かれる絆について。
思考を深め、思いを巡らせるのに最適な一冊です。
基本情報
・タイトル :ペットが死について知っていること: 伴侶動物との別れをめぐる心の科学
・著者/編者:ジェフリー・M・マッソン (著)
・発行日 :2021年10月4日
・ページ数 :320p
・出版社 :草思社
【 メッセージ 】
◾️私たちが実際に「そばに」いるとわからせてあげるだけで、動物たちの旅立ちはまったく違うものになる。私たちはせめてそれだけでも、彼らに恩返しすべきなのだ。
◾️犬は私たちが感じる幸福にとても近いものを感じている、それはたしかではないだろうか。私自身はそう確信している。さらにいえば、犬が感じる幸福は人間のそれよりも良質で上質なものなのだ。なにひとつ混じりけがない、純粋な幸福といおうか、私にはそう見える。しかも、犬は多くの人間に対して、そんな幸福を感じていると思う。だから私たちは犬と一緒にいたくなるのだろう。犬がもたらしてくれる純度の高い幸福感は、犬と一緒でないと味わうことはできない。
◾️人間の家族の重荷になることを心配する犬などいない。家族といつも接していたい、彼らの願いはそれだけだ。
◾️私たちには、彼らと一緒に過ごしてきた膨大な時間がある。私たちは家にいるとき、いつでも彼らの存在を感じている。犬を連れてひとり散歩に出かけ、ときには何時間も一緒に歩く。その自覚すらないかもしれないが、私たちは犬に秘密を打ち明けることもある。彼らはけっして批判せず、不信のまなざし(「そんなことを言うなんて信じられない! なんてバカなんだ」という表情 )を向けたりもしない。ここまで理解してくれて、許してくれて、一緒にいることを熱望してくれる人間の伴侶などいない。
◾️実際に体験してみないと、犬の愛がそれほどのものだとは信じられないだろう。だが一度でも体験すれば、この愛を知らずによく生きてこられたなと感じるはずだ。
◾️彼らは生まれたその日から、極めて純度の高い喜びを私たちに与えてくれる。この得がたい体験が死によって失われるとき、私たちの心は衝撃に打ちのめされてしまう。私たちは愛する人を失うと、その人と歩んだ愛憎半ばする人生を振り返ることがある。だが、犬や猫との別れにおいてそんなことはしない。彼らに憎しみを抱く理由など、どこにもないからだ。
◾️伴侶動物の死をどう悼むのかは、完全に私的かつ個人的に決めることなのだ。彼らと過ごした人生を讃えるときと同じように、自分の心に従えばいい。あなたに処方箋を出してあげられる人はいないのだから。「正しい」悼み方などないし、人はみなそれぞれに悲しみに向き合っている。
◾️動物の死は、私たちの内なる感情を解き放ってくれる。それは自分でも初めて知る感情かもしれない。自らの本質の最も深いところに触れるこの体験は、動物たちからのギフトともいえる。
◾️あなたの愛する動物と過ごす時間を祝福しよう。そして、さよならを告げるときが来たら、自分なりのやり方でいくらでも時間をかけて見送ってあげよう。彼らが生きたこと、彼らが贈ってくれたギフトを心から讃えよう。
人間は忘れる生き物。
どんな感動もどんな興奮も時が経てば記憶の底に沈みゆき、その片鱗さえも見失いがちです。
それは読書も同じこと。
読んだ直度の高揚が、数日後にはすっかり雲散霧消…… などということも。
ですが、読みながら機微に触れた内容を整理しておけば、大切なエッセンスだけは自分の中に残る── はず。
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