『「ペットロス」は乗りこえられますか? 心をささえる10のこと』は、大学で人とペットの関係やペットロスの研究をしている著者が、実際の事例を交えて、回復への道程を具体的に説いている一冊です。

著者は『人とペットの心理学 コンパニオンアニマルとの出会いから別れ』(北大路書房)という本で、三章にわたりペットロスについて概説しています。
しかしこれは専門書に近い本であり、一般の方にも読みやすいペットロスに関する本を出版したいと考えたそうです。
ペットを亡くすと、飼い主は救いを求めてインターネットで検索したり、書籍を読んだりします。
ですが中には、間違った内容のものや、現実的ではないものもあるそうです。
また、
ペットロスに関する本は少なく、
あったとしても心の専門家が執筆した本はほとんどありません。
そこで、
・ペットを亡くした飼い主が手に取りやすく
・ペットロスの正しい知識が書いてあり
・悲しみを癒す手助けになり
・ペットロスのサポートに関わる人々の参考にもなる
そんな一冊として、本書を出版されました。
ペットを亡くした直後、なかなか専門書を読む気にはなれませんが、
読みやすい本書は、回復への道程を教えてくれます。
それを知ることは、悲しみのトンネルの先にある、光を感じるための最初の一歩です。
基本情報
・タイトル :「ペットロス」は乗りこえられますか? 心をささえる10のこと
・著者/編者:濱野 佐代子 (著)
・発行日 :2024年6月20日
・ページ数 :112p
・出版社 :KADOKAWA
【 メッセージ 】
◾️ 愛情が深ければ深いほど、悲しみも深くなる。その深い悲しみや心の痛みは、ペットに注いでいる愛情の証ともいえる。(⒈人とペットの絆)
◾️周囲からは十分にやってあげていたように見えても、飼い主の後悔は尽きず、罪悪感さえ持つといわれる。
しかし、そのような後悔や自責の念を抱いている飼い主こそ、責任感が強くペットのために献身的に尽くしていた方なのだ。(⒉後悔と心身の不調)
◾️悲しみと悔しさ、寂しさや切なさの混沌とした世界で、苦悩しながらも自分とペットだけの特別な物語を紡ぎ、世界を再び結びなおしていく。(⒊ペットロスの悲嘆のプロセス)
◾️飼い主とペットの関係性が十人十色のように、悲しみとの向き合い方もそれぞれ。(⒋世の中に認識されにくい悲しみ)
◾️ 飼い主自身の方法で、納得いくこといかないことがありつつも、意味づけをしたり保留にしたり、様々に心の中で折り合いをつけていく。それはペットを忘れてしまうことではなく、心の中にペットが生き続けることでもある。(⒌ペットロスからの「回復・適応」とは)
◾️ 葬祭のやり方に決まりごとはない。飼い主がペットのためにやってあげたいこと、それが最良の方法なのだ。(⒍様々な見送りの方法)
◾️対象喪失に伴う哀しみは、個人が経験する内的な世界のものであり、自分以外の他者がとるに足らぬものとみなすべきではない。(⒎回復・適応へのサポート)
◾️次のペットを迎えるタイミングは人それぞれ。基本的にはペットロスのグリーフから回復・適応した時に、そして本人の希望がある時に、新しいペットを迎えるのがよいかと思う。(⒏ペットロスの悲しみに寄り添う)
◾️喪った瞬間は、誰もが「悲しみが消えることはない」と思う。しかし圧倒されるようなその悲しみからも、解放されていく。自分の中に悲しみを包み込んで、生きていけるようになる。(⒐悲しみのトンネル)
◾️ペットは亡くなっても、そのペットが完全に消滅することはない。その人の心の中に生きていて、思い出すといつでも会える、穏やかな気持ちにしてくれる、困った時や辛い時に慰めてくれるような存在となっていく。(⒑トンネルの先に)
◾️希望などないと思われる真っ暗闇の中、唯一の光がある。それは、ペットと暮らしていた時も亡くなった今も、飼い主が注ぎ続けているペットへの深く純粋な愛情。その愛情に照らし出された飼い主とペットとの続いていく絆が、この深い闇から救いの手を差し伸べてくれる。(あとがき)
人間は忘れる生き物。
どんな感動もどんな興奮も時が経てば記憶の底に沈みゆき、その片鱗さえも見失いがちです。
それは読書も同じこと。
読んだ直度の高揚が、数日後にはすっかり雲散霧消…… などということも。
ですが、読みながら機微に触れた内容を整理しておけば、大切なエッセンスだけは自分の中に残る── はず。
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