『7日間で突然頭がよくなる本』は、自称「あまり頭がよくなかった」哲学者の小川仁志氏が、「頭がよい人間」に生まれ変わった魔法、すなわち「哲学」について読者に伝授する本です。

ところで、「頭がよい」とは、いったい何を意味するのでしょうか?
テストで高得点を取れる?
資格をいっぱい持っている?
違います。
著者のいう「頭がよい」とは、「物事の本質をつかむことができる」ということです。
皆が首をかしげているときに、「つまり、こういうことでしょ」と、さらっとわかりやすく説明できること。
それが、物事の本質をつかむ、つまり「頭がよい」ということなのです。
哲学は、その意味での賢さを私たちに提供してくれる学問です。
実際に著者も、哲学的思考を身につけたおかげで、落ちこぼれ人生から現在の人気哲学者へと転身されたそうです。
哲学は思考のツールであり、「使うための学問」。
使えなければ、いくら学んでも意味がありません。
7日間で突然頭がよくなる…… かどうかは個人差があるでしょうが、
「頭がよくなる」ための魔法を知っておくには必須の一冊です。
基本情報
・タイトル :7日間で突然頭がよくなる本
・著者/編者:小川 仁志(著)
・発行日 :2015年12月17日
・ページ数 :185p
・出版社 :PHP研究所
【 読書メモ 】
◾️ 7日間のフローチャート
1日目:社会のことを知る
2日目:哲学の知識を身につける
3日目:哲学の論理パターンを使いこなす
4日目:物の見方を変える
5日目:言葉の意味を膨らませる
6日目:言葉を論理的に整理する
7日目:一言でキャッチーに表現する
◾️ 1日目:社会のことを知る
・社会のことを知らないと物事の本質は見えない
・社会のことを知るためには、読書と新聞・ニュースによって最低限の教養(自然学(科学)、歴史、文学、時事)を身につける必要がある
◾️2日目:哲学の知識を身につける
・哲学の知識を身につけるには、哲学史を押さえる+哲学概念に親しむ
・知ったかぶりをせず、自分の知識に謙虚になって、自分自身に問いかけることで、哲学的思索は始まる
・哲学者の思索の歴史のうえに、私たちの思考の営みも横たわっているという事実を頭の片隅に置いておくことが大切
◾️3日目:哲学の論理パターンをつかいこなす
・賢くなるための論理パターン(哲学概念)ベスト10
①カテゴリー:種類ごとに階層的グループに分ける(頭の中に自分なりのモノサシを設定)
②主観と客観:主体と客体で区分する(誰が何をしたのかという主体と客体の区別)
③時間と空間:時間軸と空間軸に位置づける(時間的・空間的把握能力)
④イデア:物事の正体を見抜く(一つの情報を鵜呑みにしない)
⑤運動として捉える:動いている途中として見る(例.花の変化を運動として捉える)
⑥弁証法:マイナス要素をプラスに転じる(二つの対立する要素を生かしつつよりよい解決法を見出す)
⑦差異として捉える(否定弁証法):差異を重視する(違いを認め、決めつけない)
⑧構造主義:構造の中で捉える(物事を全体の関係の中で捉える)
⑨因果関係:原因と結果の関係として見る(原因のない結果はない)
⑩人間にとっての意味:人間の存在を前提に考える(人間が哲学をする以上、そうなる)
◾️4日目:物の見方を変える
・物事の本質をつかむためには、常識を疑い、いろいろなものの見方ができることが大前提
◾️5日目:言葉の意味を膨らませる
・言葉の意味を豊かにするために、言葉の家族(類似語)、仲間(関連語)、敵(反対語)を探す
◾️6日目:言葉を論理的に整理する
・具体的方法:膨らませた言葉をグループに分ける → グループ内の類似する言葉を1つにまとめる → 哲学概念を使って整理する → 一文にする
◾️7日目:一言でキャッチーに表現する
・まとめた一文をキャッチーに表現することで、本質がより際立ち、哲学らしくなる
・普遍化する(抽象的な表現にする)→ 見栄えを整える(キャッチーな表現にする)→ 完成
◾️大事なことは、考え続けること
◾️哲学名言
・パスカル
われわれは絶壁が見えないようにするために、何か目をさえぎるものを前方においた後、安心して絶壁のほうへ走っているのである。(『パンセ』より)
・ルソー
人間は自由なものとして生まれた。しかるに、いたるところで鎖につながれている。(『社会契約論』より)
・アラン
「うまく行ったからうれしいのではなく、自分がうれしいからうまく行ったのだ」といつも考えなければならない。(『幸福論』より)
人間は忘れる生き物。
どんな感動もどんな興奮も時が経てば記憶の底に沈みゆき、その片鱗さえも見失いがちです。
それは読書も同じこと。
読んだ直度の高揚が、数日後にはすっかり雲散霧消…… などということも。
ですが、読みながら機微に触れた内容を整理しておけば、大切なエッセンスだけは自分の中に残る── はず。
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