『やすらぎの大地 クレストンの青い鳥』は、
古代よりネイティブ・アメリカンの人びとにとって聖なる地であったクレストンを舞台とした絵本です。
想像を絶するスケールで広がるやすらぎの大地を、
かろやかに大空を舞う一羽の青い鳥が案内します。

基本情報
・タイトル :やすらぎの大地 クレストンの青い鳥
・作者/訳者:葉 祥明 (絵・訳)
・発行日 :2004年7月10日
・ページ数 :36p
・出版社 :自由国民社
クレストンの空は限りなく広く、
その大地は遥か彼方まで続く──。
作者の葉祥明さんは、ご自身でその地を訪れ、
そこで感じたスピリチュアリティー(霊性)、平和、豊かさを
絵本の画面いっぱいに描き出しています。
サングレ・デ・クリストに いだかれて
めのまえにひろがる 雄大な 景色をみていると
あなたは 我をわすれるでしょう
私がこの絵本を手にしたのは、
17年を一緒に生きた愛犬が旅立ち、
世界が灰色に塗りつぶされていたときでした。
心は寒々と冷え、
私の時間は最期の数日にぎゅっと凝縮されて、
そこで止まってしまったかのようでした。

そんな中で開いたページ。
クレストンの抜けるような空に舞う一羽の青い鳥。
荘厳なサングレ・デ・クリスト。
神秘のみずうみ、サンルイスレイク。
そして ──
偉大なグレイト・サンデューン。
大自然が悠久の時とともにつくり上げた奇跡。
その壮観をやさしく描いた葉祥明さんの絵は、
硬くこわばっていた私の心に
小さな亀裂を入れてくれました。
ひとは ときに 大自然という
おおきく 偉大なものに
身をまかせる 必要があります
私のあの子は、
大自然のなかに戻っていきました。
それは宇宙の法則で、
自然の理で、
魂の変遷で ──。
私がいくら抗おうと覆せないものです。
ただ、心がついていかないだけなのです。
今でも、ふとした瞬間、
あの子のいない日常が続いていくのだという現実に、
愕然とすることがあります。
それでも。
あの子と生きた時間を哀しいだけのものにはしない。
あの子のために笑って生きる。
この絵本を手に取ったのは、
その第一歩だったのかもしれません。
あの子が再び戻っていった大自然の平安を、
私は束の間、感じることができた。
あの子がとけこんだ大自然と、
私はつながっている。
その感覚がそっと、私を前へといざなってくれました。

人間は忘れる生き物。
どんな感動もどんな興奮も時が経てば記憶の底に沈みゆき、その片鱗さえも見失いがちです。
それは読書も同じこと。
読んだ直度の高揚が、数日後にはすっかり雲散霧消…… などということも。
ですが、読みながら機微に触れた内容を記録しておけば、大切なエッセンスだけは自分の中に残る── はず。
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