『うちのこにあいたくなったときよむ、ほん』は、自身もペットロスを経験し、けれどやっぱり動物と共に生きていこうと決めた著者が、いつかまたペットロスを経験するであろう「未来の自分に向けて」残した手紙でもあります。

「こんなつらい思いをするくらいなら、もう二度と動物は飼わない」。
大切な存在を失った飼い主は、必ずそんな感情を抱くと思います。
著者も、心の底からそう思っていました。
なのに気がつけば、やっぱり猫と暮らしていた──
あの子の存在を、可哀想なものにしたくないから。
あの子との思い出を、悲しいものにしたくないから。
あの子と一緒に生きた時間を、辛く苦しいだけのものにしたくないから……
だから、
「あの子とのことを絶対ハッピーエンドにする!」
と決めて、
前に進みました。
「生まれ変わってくるあの子に会うために生きる」
と決めて、
生まれ変わったあの子に出逢いました。
「こんなつらい思いをするくらいなら、もう二度と動物は飼わない」。
「こんなに苦しくて果てしない喪失感を、どうやって乗り越えたらいいのかわからない」。
そんなどん底状態で、手に取った本です。
綴られている言葉のひとつひとつに、今、支えられています。
基本情報
・タイトル :うちのこにあいたくなったときよむ、ほん
・著者/編者:松原ゆーこ (著)
・発行日 :2021年10月11日
・ページ数 :92p
【 メッセージ 】
◾️ ふとなんとなく気配を感じる時は、きっと本当にそばにいる。
だから、「もういないのに……」とさびしくなるのではなくて、「ここにいるんだね」と感じてほしい。
◾️ 悲しみや苦しみが大きいのは、当然のこと。
だから、「すぐに忘れる」とか、きれいさっぱり記憶から消し去る、とかは無理。
でもそれは、思い出すたびに胸がぎゅっとつまるような『悲しい過去』としてではなく、思い出すたび、なんだかあったかくてほっこりするような、『優しくて嬉しい今』として、いつも近くに感じることができるようになるので大丈夫。
◾️ペットロスの時期は、何をどうしたらいいのか分からなくなったり、今まで普通にできていたことができなくなってしまうこともある。そんな自分が嫌になってしまうことも多い。
そんな時期は、
「今はこれでいい」
「どんな自分でもいい」
「できなくても仕方がない」
と、全部全部許してあげる。
◾️なにをやってもむなしい時がある。
何をやっても意味がないと思ってしまう。
調子が良い日と最悪な日、ぼんやりする時間と覚醒している時間、「家にいるとつらいから」と外に出れば帰るのがつらくなり、愛と絶望の狭間で気持ちが上がったり下がったり。
この振れ幅がだんだん小さくなって回復する。
◾️あの子と一緒に生きたことは、私の人生史上、最高に幸せなことだったはず。
◾️ すべては完璧なタイミングで起こっただけ。
全部全部、正しかった。
そしてそれは、動物たちが決めたこと。
彼らの選択を受け入れる。
◾️ 動物は人間が思っている以上に壮大で偉大な愛の塊。
ペットロスはその愛に気づいていく過程。
苦しくてさみしくて、つらすぎるこの時期、
動物からの途方もなく大きな愛に気がつくと
全てがあたたかいものに変わっていく。
◾️肉体だけを重視していると、
もっと大きなものの存在に気がつけなくなる。
死の瞬間にだけ注目していると、
今まで過ごした時間が見えなくなる。
でもうちの子は「肉体だけ」「最後の瞬間だけ」それだけじゃないはず。
◾️いつどんなときだって、あなたがあなたらしく笑って生きていることが、あの子はなによりも嬉しい。それがあの子にとっての最大の喜びだから。
人間は忘れる生き物。
どんな感動もどんな興奮も時が経てば記憶の底に沈みゆき、その片鱗さえも見失いがちです。
それは読書も同じこと。
読んだ直度の高揚が、数日後にはすっかり雲散霧消…… などということも。
ですが、読みながら機微に触れた内容を整理しておけば、大切なエッセンスだけは自分の中に残る── はず。
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