《映画レビュー》『ロスト・キング 500年越しの運命(2023)』 私は強く感じる

映画

昨年公開(2024年現在)の『パリタクシー』をAmazonプライムビデオで見終わったところ、関連作品として表示されたのがこの作品です。
公開されていたことさえ知らずに見逃していた作品ですが、実話をもとにしたヒューマンドラマ。

興味をかき立てられて、観てみることにしました。
 ( 結末を暗示する内容が含まれています。これから鑑賞される方は、ご注意ください。)

作品情報
製作年:2022年
製作国:イギリス
劇場公開日:2023年9月22日
上映時間:108分
監 督:スティーブン・フリアーズ

あらすじ
職場も家庭も上手くいかない主人公、フィリッパ・ラングレー。
苦悩の日々を過ごしていたある日、息子の付き添いで舞台「リチャード三世」を観劇したことにより、人生が一変します。
リチャード三世はこんな人じゃない。
リチャード三世は誤解されている。
根拠のない確信と抗えない信念を胸に、フィリッパの探求の旅が始まります。

主 演
フィリッパ・ラングレー(サリー・ホーキンス)
「リチャード三世」の舞台を観劇したことにより人生が輝きだす、主婦でアマチュア歴史家の会社員。
家族や同僚の理解を得られず、専門家や研究家からも不審者扱いされる中、自らの直感と信念だけを頼りにひたむきに行動しつづけ、500年以上にわたる英国王室の偽りの歴史を覆します。
演じるのはサリー・ホーキンス
真の実力派でありながら、誰より“普通の女性”を見事に体現できる女優です。

夢中になったことにとことんのめり込む女性の姿を、等身大で見せてくれます。
オスカー受賞作『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年製作/ギレルモ・デル・トロ監督)ではアカデミー賞女優賞の候補となり、イギリスで最も尊敬を集める俳優のひとりです。

直感

フィリッパは孤立無縁です。
「リチャード三世は勇敢で忠誠心にあふれ、敬虔で正義感の強い人」。
そんなことを考える彼女は、変人扱い。

「あの有名なシェイクスピアが、リチャード三世の冷酷非情さを描いているというのに、この女はいったい何を言っているのだ」。

誰もが彼女の言うことを疑い、親切な言葉の裏にも冷笑が垣間見える。
その繰り返し。

それでも、彼女は諦めません。
リサーチを続け、情報を集め、気になった人物に会いにいき、歴史学者に協力を求める ──

そんなフィリッパには、たびたび直感的な体験がおとずれます。


  私は強く感じる

  私は信じている

フィリッパの探求の旅も、直感で始まりました。
観劇で何かを感じ、その感じに従って行動を起こし、
それが歴史的な探求へとつながります。

講演会でたまたま目が合った博士に意見を求め、
リチャード三世協会でたまたま聞いた考古学者に会いにいき、
リサーチ中にたまたま足の向いた駐車場で衝撃を感じる。

それらはすべて直感で、
いわゆる専門家に言わせれば「ばかばかしい」。

でもその直感が、500年以上にわたる偽りの歴史を覆したのです。

フィリッパの直向きな行動を見ていると、胸が熱くなってきます。
自らの信念にしたがい、どれほどの逆風にさらされようとその歩みを止めない。

それに対して、フィリッパの周りで騒ぐ人たちのなんと矮小なことか。
市の宣伝、大学の評判、自分の肩書き ……
そんなことにばかり夢中になって、目の前で起きていることに感動することさえできません。

「騒ぐのはそこじゃないだろう」
「熱くなるのはそこじゃないだろう」

映画を見ながら何度も、そんな思いが湧き上がってきました。

リチャード三世の遺骨が発見されたあと、フィリッパは表舞台から取り残されます。
世間的に華やかな部分は、当初フィリッパに懐疑的な視線を向けていた周りの人たちが貪るように奪っていき、
最初からフィリッパなどいなかったかのようです。

でも、名誉とか栄光とか威信とか、それが一体なんだというのでしょうか。
フィリッパの体験は、そんな社会の価値観では測れないミラクルなものです。

直感を感じられること、
信念に従って行動できること、
夢中になって奔走すること、
記憶に残る奇跡的な瞬間に巡りあうこと ……

胸の奥に火がともる ──
そうした体験こそがすばらしいのだと、教えてくれる作品でした。

 現在この作品は、AmazonPrimeVideoで配信されています。
 Amazonプライム会員の方は、無料で視聴可能です。
 興味を持たれた方はチェックしてみてください。

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