新聞の人生案内。
哲学者 小川仁志さんの回答がいつも面白くて、
著書があれば読んでみたいと思っていたところに見つけた本です。
中高生だった時代は遠い昔ですが、
そこはひとまず置いておいて、
読ませていただきました。
『ロッチと子羊』で学ぶ中高生のための哲学入門 [ 小川 仁志、『ロッチと子羊』NHK制作班 ]
疑う
最近読んだ本に、
「脳を使って自分で考える」という行為は大量のエネルギーを要します
と書かれていました。
だから、自分に都合のいい考え方があるとすぐにそれを取り込み、
さも自分で考えて決断を下したかのように錯覚してしまうのです。
つまり、
刷り込み、洗脳、思い込みなどによる思考停止状態です。
それで人生がうまくいっている時は、まぁ日々の生活もそれなりに楽しいでしょうから、
あまり問題はないように感じます(ヨガ哲学的に見れば、それはそれで大いに問題ありですが)。
ところが、
うまくいっていない時にも「自分で考える」を放棄している状態では、
なかなか突破口が開けません。
そんな時に手助けしてくれるのが、「疑う」という哲学のエッセンスです。
マジメすぎることで
p93
臆病になるぐらいなら、時には
愚かになることで突破しましょう。
デジデリウス・エラスムス(1466-1536)
そもそも失敗は否定すべきことではありません。
p105
だから学ぶ必要などないのです。
失敗とは人生という冒険の一過程にすぎません。
三木清(1897-1945)
哲学は本当に面白いです。
私は、ヨガ哲学を学ぶようになって以前にも増してそう思うようになりました。
中高生時代にも哲学の考え方に惹かれたことがありますが、
それよりも、
正しいとされていることや授業で習った知識を詰め込むことに忙しく、
哲学する余裕がありませんでした。
本来なら中高生時代に、
正しいとされていることや、みんなが言っていることを
「本当かな?」
と疑い、
自分で自分の視点を変えていける訓練ができれば良かったのでしょうが、
当時の私は思考停止状態に陥っていました。
だから、今、訓練中です。
「否定は肯定の反対ではありません」
「人は誰しも外的な力で動かされています」
「自分探しをする必要はありません」
そして
「エポケー(判断中止)」。
どれもこれも、生涯をかけて悩み続けた哲学者たちが残した考え方です。
この本を読んでいると、
悩みに年齢は関係なく、
時代さえも関係なく、
自分の生に多少なりとも真剣に取り組んでいるならば、
悩みは自ずとうまれるものだと思いました。
そして、
悩みの生まれたその時に、哲学的思考を持ち合わせていたら、
人生は随分違ったものになるだろうとも思いました。
引用で紹介した三木清は、
「近代の成功主義者は型としては明瞭であるが個性ではない」
ともいっているそうです。
すなわち、
人生の目的が「成功」だと、
成功を良、失敗を悪として失敗を悔やむことになるが、
人生の目的が「幸福」であるなら、
成功・失敗のどちらも混ざったカラフルな人生が幸福に向かって冒険している、
と考えられるようになるというのです。
カラフルな人生を考えられたなら、
失敗でさえ、
この生を彩り豊かにするための貴重な体験にみえてきます。
哲学に触れたことがある人も、
触れたことがない人も、
哲学の面白さを実感できる1冊。
私も、哲学することがますます楽しみになりました。